洋画『教授のおかしな妄想殺人』 哲学者が血迷った結果
自分の存在意義や人生の道標を見失っていた、哲学科教授のエイブ。
しかし教え子のジルと立ち寄ったダイナーで、偶然ある判事の悪行を耳にし、エイブは目覚めたように“生きる意味”を見出す。
それは、悪徳判事暗殺への挑戦だった。
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悪徳判事の噂というのはある夫婦の離婚裁判で、判事が夫の知人で贔屓があり、子どもの面倒をみたこともない夫に親権を渡そうとしているという話。
絶望する妻が「あんな判事、病気になればいいのに」と嘆いたのを聞いて、エイブは「ぼくならやれる」と心の中で奮起するんです。
殺人なんて絶対犯してはいけないことだけれど、エイブの中では道徳的で悪を排除する正義。
しかしこの行いを正当化しようとするあまり、当然ながら周りとズレが生じていきます。
エイブは哲学家なだけあって、それっぽいことをそれっぽく言うのが上手いんです。
だからエイブの言葉にクラっときちゃう女性も多いし、多分本人も自分に酔ってて詰めが甘いことに気付いてない。
彼の歪んだポジティブさも怖いんですけど、このエイブに惹かれてしまう女性の一人、教え子ジルも危険な子なんですよね。
ジルは元々エイブの著書を読んでいてファンだったこともあり、自分が通う大学に赴任すると聞いて舞い上がっちゃうんです。
文字通り恋は盲目状態で、「彼には私がいないとダメなの」に陥りやすいタイプ。
ジルには超一途な彼氏ロイがいるというのに…。
ロイは最初から最後までいい彼氏なんだよなぁ。(羨ましい)
タイトル的に“エイブがどう暗殺を計画し実行するか”という映画かと思いましたが、本編は何とも皮肉に満ちた物語でしたね。
エイブ目線では順調に進んでいるように思えても、実はそんなことないっていう。
原題を見てみたら『Irrational Man』。
Google翻訳すると「不合理な男」だそうで、なるほど納得(笑)
自分で蒔いた種が見事に自分にかえってくる展開は、見ていて面白くもあり、教養的なストーリーにも感じました。
その極みがエイブとジルが遊園地に遊びに行った時に、エイブがゲームに勝って景品を選ぶシーン。
たくさん品物がある中からジルは懐中電灯を選んだものだから、エイブは「こんなにあるのに懐中電灯?実用的だねw」と茶化すんですよ。
この懐中電灯が、本当に“実用的”だった(笑)
でもコメディに描かれていてお気楽なBGMまでかかっているけど、よく考えるとエイブは恐ろしい思想家だし、ホラーにもなり得るストーリーなんですよね。
これはBGMの大切さが分かる映画ですな。(そうじゃない)
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