映画いろいろ。

映画の感想文。何となく目に止まった作品を、何となく観始めるのが好き。

邦画『王様とボク』 大人になんかなりたくない

6歳の時に事故で意識不明になったモリオ。
友達のミキヒコとトモナリは、この悲しみを思い出さないように生きていた。


ところが12年経った今、奇跡的にモリオの意識が回復し、ミキヒコは病院を訪ねることに。

しかし、モリオの体は18歳に成長していたが、心は6歳のままだった。



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あらすじを読んだ時、12年眠り続けた時差を持つ人間関係が描かれるのかと思いましたが、見てみるとかなり抽象的でした。
むしろ焦点をあてるのはその眠り続けていたことに対してではなく、“大人”と“子ども”という概念。



ミキヒコ達は18歳。
何もない平凡な毎日をつまらないと感じたり、不安に感じたり。

このままでいたいけれど、しかし時は確実に流れていく。

大人になんてなりたくないと、葛藤しています。



そんな時に、まるで子どものままタイムスリップしてきたかのようなモリオの存在。
子どものままでいたいと思うミキヒコの象徴のようになるんです。




ミキヒコの彼女キエも協力しているように見えて、でも本心は“友達の目覚め”というより退屈な日々に起こったイベントの一つに過ぎないように思えたし、
トモナリはいつも冷めているけど、本当はモリオのことを忘れたフリをして悲しみを乗り越えてきたから、内心は物凄く動揺していたり。

映画自体はとてもふわっとしたものなんですが、登場人物の心理描写は非常にリアルなんですよね。


私も同じくらいの年の頃を思い出して切なかった。というか、何なら今の私でも“大人って何だ”という気持ちに共感しました。

子どもから大人への境界線なんて明確に分かるものじゃないから、分からないことへの不安なのかな。
(成人したら大人なんだよってツッコミは無しで)


ミキヒコ達は大人になることに抵抗して現実逃避しているけど、途中出てきた小学生達はよく大人を分析していて説得力があった。



だけど最後はどう解釈したら良いものか悩みますなぁ。
この映画は正体がわからない“大人”という不安を描いたものだから、ハッキリした答えを出す必要もないのかも。